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「弔辞。葬祭部、遠藤悠真。天国聖子さん。今、僕はある葬儀の担当をしています。誰の葬儀だと思いますか? ……あなたの葬儀です」
正面を見れば、はにかむ遺影と目が合う。会社の制服を着た、見慣れた姿。いつもと変わらぬその笑顔。
「先に謝ります。面白い弔辞を用意できずにすみません。たくさん考えましたが、僕には話を脚色する力はないようです。なので、僕は僕の言葉で喋ります」
――そんなふうだから、いつまでたっても女性にナメられるのよ。
耳元で懐かしい声が聞こえる。交際が始まると、必ず主導権を相手に握られてしまう。そんな僕の悩みを、彼女は楽しそうに叱責する。
「天国さん、あなたは入社した時のことを覚えていますか? 快活で、いつも笑顔。社員とすぐに仲良くなり、あっという間に会社の一員として欠かせない存在になりました」
――過去形、反対! 私は現在進行形で皆のアイドルなんだから!
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