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「社員として大きな企画を任されたことがありましたね。初めてのことばかりで、皆が協力してくれたから何とかなったと、あなたは言っていましたね。天国さん。皆あなたが好きで、力になりたいと思ったから。だから助けたんですよ」  ――そりゃそうよ。私の人徳は遠藤くんと違ってすごいのよ! 「結婚すると聞いて……僕は、本当に喜びました。退職後、顔を見せてくれたあなたに、天国さんと声をかけた時。嬉しそうに、少し恥ずかしそうに答える姿が、とても眩しくて。ああ、これが幸せなんだなと思ったものです。だから、あなたが遥かなる地でも幸せであることを、切に願います」  指が震える。緊張を押さえつけながら、悠真は弔辞の文面を丁寧に畳み、懐にしまった。 「天国さん、本当に、本当に、ありがとうございました」  深く深く、頭を下げる。式場の空調が単調な音を立て、空気を揺らす。最後に遺影を一瞥すると、彼は仕事の持ち場に戻って行った。
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