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「遠藤、今日は本当にありがとうな」 「部長。僕のことは構わず、奥様の近くにどうぞ」 「いや、今はいい」  棺の周りは彼女を偲ぶ社員や身内でいっぱいだ。夫は目を赤く染めながら、囲まれる妻をそっと眺める。 「もうすぐ出棺だな」 「はい」 「火葬場への行き帰り、道を変えるのは何故か知っているか」 「故人様の魂が、火葬場から戻ってこないように、道を変えます」  新入社員時代に、目の前上司から教わった内容。葬儀の担当者としては基礎知識の部類に入る。知っていて当然だ。 「そうだな。では、もし同じ道を選んで帰ってきたら、魂は戻ってくるのだろうか」  らしくない発言に、悠真の思考がざわめき出す。  もし、魂が戻ってきたら。
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