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悠真は半笑いで答える。
「あり得ません」
部長は黙って、悠真に視線を向けた。
「もし魂が戻ってくるなら、天国さんは僕に葬儀の担当をやらせません。部長にだって、喪主をさせたりしませんよ」
参列の波が落ち着いてきた。皆、充分に別れを惜しんだに違いない。
「……時間だな。よろしく頼む」
「かしこまりました」
悠真は親族に声をかけると、グラスに注いだビールを渡す。本来なら口が渇かないように、水で唇を湿らせるが、彼女は大のビール好き。アルコールで別れの儀とする。
祭壇の近くに飾られていた品も入れられた。ニット帽、会社の制服、好物の餃子。最後に手を合わせ、棺の蓋を親族の手で閉めてもらう。
行き先は霊柩車。喪主を先頭に遺族で列を組むと、親族が棺を持ち上げ、出発となる。式場の入り口で待機する車に聖子が収まると、その後の流れは速やかで。
火葬場に行く者は手配されたバスに乗り、見送る者は出発の邪魔にならないよう、式場の壁に沿って人垣を作る。
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