45人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「そりゃ、稼ぐためよ。決まってるわ。じゃあ、遠藤くんはどうなのよ」
「僕はちょっとヤンチャしてたので……。何とか高校は卒業したんですが、就職先がなくて。それで拾ってもらったんです」
「ほらあ。大した理由じゃなかった」
聖子のストレートな物言いに、悠真は思わず苦笑する。
何故葬儀会社に就職したのか。
この業界に入った者にとってはメジャーな話題だ。
聖子がアルバイトとして入社して来たのは、悠真が二十歳の時だった。
彼女は三十九歳にしては若々しく、恐ろしく美人で。笑えば大輪の花が咲き、程良い肉つきの身体は異性の瞳に蠱惑的に映る。独身ということもあり、世帯じみた空気がないのも男性に受けた。
しかし、聖子と付き合おうとする者はおらず。
何故なのか。
その理由はすぐに分かった。
「遠藤くんって、ドーテーなの?」
文字通り、悠真はお冷やを吹き出した。汚れたテーブルをおしぼりで拭いながら、ぼそりと回答する。
「……いや、そんなことはないですよ」
最初のコメントを投稿しよう!