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 式場スタッフの対応が悪く、恥をかいた。  それが住職の言い分だ。  事件は葬儀終了時に起こった。読経が終わり、あとは退場するのみ。聖子は住職が立ち上がるのを確認すると、式場内に入り、寺院用の椅子を片付けた。こうすることで、振り向いた住職の進路を妨げることなく、綺麗に退室することができる。  アルバイトの仕事は掃除から式運営の補助まで多用だ。彼女は仕事の飲み込みが早く、今回も滞りなく終わる予定だった。  宗教者の退場には敬意を払う。聖子は体を四十五度傾け、最敬礼。あとは住職が無事控室に入れば、喪主挨拶の流れとなる。  式場の無機質な床を見つめる彼女。すると、視界の端に何かが落ちて来た。参列者が騒がしい。どうしたのだろう。  瞳を動かし、物を見る。  ふさふさで、健康的な黒色の毛玉。  恐る恐る顔を持ち上げると、耳まで真っ赤に染まった、バーコード頭の住職と目が合った。 「絶対につけ方が悪くて、空調の風か何かで取れたんですよ」   聖子は閉式後、カツラを住職に届けた。すると、おまえのせいだと雷が落ちたのだ。  人のカツラを届け、叱られるとは思わず。想定外の出来事に、彼女は戸惑った。
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