はじめて僕が死んだ夜

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 いいぞ、ガンバレ、父親。  その時、僕はふと懐かしい匂いを嗅ぎとった。 (──汚ねえなあ。ベトベトじゃないか、まったく)  リュウだ。  間違いない。姿は変われどこの父親の匂いは間違いなくリュウだ。 「ほら、おまえもあっちいけ。しっ、ほら、しっしっ!」  父親に抱きかかえられた子供といえば今度はすっかり別のものに興味をそそられている。空に白いものが舞い始めていた。 「雪!」  笑える。  あの、チビで泣き虫の竜太が父親に。 「死なないで!」と訴えていたリュウが僕を「しっしっ!」と追い払っている。  僕は一声だけ鳴いた。人間にはわからない言葉だし、その時何を言ったか僕だって覚えてない。  父子はもう振り返らなかった。僕は逞しく成長したリュウの背中をしばらく見つめ、また歩き出した。  ふん。  飼われるなんてこっちから願い下げだね。もうガキの鼻水にまみれるのは二度とごめんだ。  雪はもうすぐこの町のアスファルトをうっすらと覆うだろう。初めて僕が死んだあの夜のように。  今度の生涯はいつどこでどんな風に終わるのか。    それは僕もまだ知らない。
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