はじめて僕が死んだ夜

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はじめて僕が死んだ夜

 僕は死んだ。  冷たい粉雪の舞う夜だった。  おしまい。  なんてね。  おっと、ご安心を。  なんてったって僕たち猫は九つの魂を持ってるのだ。  平均して十年も生きれば長い方であろう僕らの寿命。それが九回繰り返されるというわけである。こっちとしてはたまったもんじゃないけど。  とにかく僕は死んだ。 「ミリィ! ミリィ……」  僕はその時ミリィという名の真っ白なメス猫だった。 「死なないでよぉ、ミリィ」  そう言って顔を寄せてくるのはチビの泣き虫、竜太だ。小学生だが名目上は僕の御主人様になる。 「どうせ、すぐ生まれ変わるんだから泣くなよ。もっともまたリュウに会えるかはわかんないけどな」  そう言ったつもりだったがもはや声も出ない。死なんていつもよりちょっと長く眠るようなもんだ。ちっとも怖かない。ただ相手が悲しんでいるのが鼻水や涙を通して伝わってくるだけだ。 ──汚ねえなぁ。ベトベトじゃないか、まったく。  それが僕にとって最後の、いや最初の死の記憶だった。  二度目の死はあっという間にやってきた。  死産だったのだ。     
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