4.特別なシチューを貴方に

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玄関から賑やかな声がしてリアの弟と妹が帰ってきた。 「ほらほらゾットもノエルもお客様にご挨拶しなさい」 部屋の中は暗いのでテーブルに座っていた俺に気が付かなかったようだ。 「こ、こんちは」 「こんにちは」 二人は緊張した顔で俺に挨拶してくる。 弟は9歳で妹は7歳だそうだ。 ゾットの方はいかにも悪ガキといった感じだが憎めない顔だちをしている。 姉に似て人懐っこく、しばらくしゃべっていたらすっかり俺に懐いた。 妹のノエルは自然体といった感じで緊張することもなくニコニコしている。 「うお! なんだこの果物! それにうまそうなパン!」 ゾットがテーブルの上に並べておいた食べ物を見て興奮の声を上げる。 「コウタさん、これは……」 リアは心配そうに俺を見ている。 「ほら、せっかくシチューをご馳走になるから俺もなんか用意しようと思ってさ」 「でも、それじゃあお礼になりません……」 リアは申し訳なさそうに俯いてしまう。 かえって気を遣わせてしまったか。 「気にしないでよリア。ご馳走はみんなで分け合って食べたほうが美味しいだろう?」 「……申し訳ありません」 謝るリアを見ないようにしてゾットとノエルに声をかけた。 「あとでみんなで食べような」 幼い子供たちは無邪気な笑顔を見せてくれた。
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