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「悪いけど俺はもう結婚していて愛する奥さんがいるんだぜ」
最近つれないけどな。
「そっかぁ……なあんだ……」
それまで笑顔だったゾットの元気がなくなってしまった。
「どうした? 俺に父ちゃんになって欲しかったか?」
「そんなんじゃねえよ。ただ……コウタが家族になればうまいものがたくさん食べられると思っただけだよ。コウタは羽振りいいじゃん。さっきのリンゴや手で?むけるオレンジもおいしかったし」
「オレンジじゃなくてミカンな」
「どっちでもいいよ……」
なんとなくだけど、この子は大人からの愛情に飢えてるんだろうなという気がした。
「なっ、なにすんだよ!」
俺は強引にゾットを担ぎ上げて肩車した。
その体はびっくりするほど軽くて、それが悲しかった。
「また美味いものを持ってきてやるからな」
「本当か?」
肩の上にいるのでゾットの顔は見えなかったけど声に明るさが戻っていた。
「ああ約束する。だからあんまり髪を引っ張るな。禿げたらどうしてくれる」
「え? ハゲはもてるだろう?」
マジか!?
この世界ではそうなのか?
俺のじいちゃんは父方も母方も禿げてるから結構心配なんだよね。
将来的にはこの地に移住も視野に入れといた方がいいかも……。
って、違う!
俺には愛する絵美がいるのだ。
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