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今、このエッバベルクに余剰人員は一人もいなかった。
父の代で叙任され、この地を与えられたアンスバッハ家には頼るべき親戚も近所にはいない。
「やはり王都で人を雇うしかないか」
これ以上村人に犠牲を強いることはできなかった。
アンスバッハのような弱小貴族に余裕はないが、金で兵士を雇うしかないだろう。
手痛い出費だがどうにかなるレベルの問題でもある。
他所の貴族だって事情は似たり寄ったりなのだ。
だが兵士はともかく身の回りの世話をさせる従者は信用の置ける者に頼みたかった。
せめて素性のはっきりした村人ならばとクララは考えていたが無理だったようだ。
「この爺があと10年若ければ……」
「詮無いことを言うな」
エゴンが旅をするには歳をとりすぎている。
長年アンスバッハ家によく使えてくれたエゴンに鞭打つようなことをクララはしたくない。
「あの少女はどうだった? たしか迷宮に入ってモンスターから魔石を取っている少女がいただろう?」
「リアでございますか?」
「そうそう。あの娘なら賢いし、腕も確かだ。充分従者が務まると思ったのだがな」
すがるようなクララの質問だったがエゴン老人は力なく首を振った。
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