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最初はいろいろなことが頭の中をぐるぐる回っていたけど、そのうちにそれらのことを綺麗に忘れ、自然と一体になる感覚になっていた。
天気は晴れて雲一つなく、群青色の空が目に染みる。
来てよかった。
不思議なことって唐突に起こると思う。
それは雪道をひたすら歩いて登って、森林限界を抜けたあたりだった。
ここはどこだ?
何の脈絡もなく、俺は狭い石造りの部屋の中にいた。
ほんの一瞬前まであんなに晴れていて、雪が痛いほど眩しかったのにどうしたというんだ?
サングラスを外してみるが目に入ってくる光景は何も変わらなかった。
手に持っているピッケルをぎゅっと握りしめて心を落ち着かせる。
ピッケルとは山道具の一つで、小さなツルハシみたいな形状をしたものだ。
杖の様に突いたり、氷を掘ったり、滑落時にストッパーにしたりといろんなことに使う。
きっと武器にもなる……。
今いる場所は八畳ほどの広さで窓などはない。
壁に掛けられたランタンが唯一の光源で、部屋の中をぼんやりと照らしていた。
まったくもって訳が分からないぞ。
くすんだ青色をしたドアが唯一の出口だった。
開けるしかないよな……。
ドア越しに耳を澄ませてみるが何の音も聞こえなかった。
他に選択肢も考えられなかったのでドアノブに手を触れた瞬間、世界が暗転した。
今度は暗闇かよ!
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