6.前言を撤回します

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廊下から「馬をひけぇっ!」という大声が聞こえてきたから、きっと現場に駆け付けるのだろう。 大丈夫かな?  ちょっと心配だ。 「ゴブリンって、モンスターが現れたんですか?」 近くでまだ喘いでいるエゴンさんに聞いてみる。 「はい。毎年冬になると家畜や子供を(さら)いに徒党を組んでやって来るのです。いつもならもっと寒くなってから来るのですが、今年は凶作で山の恵みも少なかったのでしょう」 やっぱり異世界は危険がいっぱいだ。 アンスバッハさんの依頼を受けるにはかなりの覚悟がいるぞ。 「可哀想に、無事に助けられればいいのだが……」 エゴンさんは攫われた子どもを心配しているようだ。 「小さな子どもが攫われたんですか?」 「はい。ノエルというまだ7歳の女の子です」 ノエル!  リアの妹のノエルか!? 「ば、場所は? 襲われた場所はどこですか!?」 「村の東です」 エゴンさんの指さす方向を窓から確認して部屋を飛び出した。  モンスターが現れたと聞いた時、俺はまだファンタジー映画を見ているような感覚でいた。 大変な事件が起こっているのに実際に起きている事件としてとらえられなかったのだ。 だけど知っている子どもが攫われたと聞いて、それまでファンタジーだった世界はいきなり現実味を帯びてしまった。     
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