6.前言を撤回します

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そのとたんにゴブリンが痺れたように硬直してしまう。 俺は動けなくなったゴブリンに近づき……その脳天に向けて鉈を思いっきり振り下ろした。 不快な感触が手に伝わってきたが、意識をそちらに向けないように次の敵を探した。 少し離れたところでゴブリンに囲まれそうな村人が見える。 手に再び魔力を込めた。  生まれて初めて向けられる明確な殺意と、生まれて初めて他者に向ける自分の殺意の中で俺は理性を失っていた。 意識の中にあったのは相手の破壊だけだ。 自分がここまで残酷になれることをこの日初めて知った。  ふと気が付くと村人たちが(とき)の声を上げている。 なんだ?  どうしたんだ?  びっくりして辺りを見回すともうゴブリンはいなかった。 終わったのか……。 戦闘中は無我夢中で感じなかった恐怖が突然襲ってきた。 膝がガクガク震えて止まらない。 思わず膝をつきそうになったところで誰かに声をかけられた。 「アンタどこから来たんだね? まあ何でもいいや、さっきは助かったぞ!」 ゴブリンに囲まれていた村人だった。 「お、俺はアンスバッハさんに呼ばれて……」 「ああ、領主様んとこのお客さんかい」 返事も適当に周囲を見回した。 リアの姿がどこにもない。  まさかゴブリンにやられた?     
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