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「あ、あのリアは、リアを見ませんでしたか?」
「リア? そういえばさっき森の方へ駆けて行ったが」
まずい!
攫われたノエルを一人で追いかけて行ったんだ。
呆然と森へ向けた俺の視界に何かがきらめいた。
冬のか細い光を反射して光る銀色の髪の騎士だった。
鞍の前には小さなノエルを乗せている。
少しおびえた顔をしているが怪我などはなさそうだ。
馬の横には笑顔で歩いているリアもいた。
アンスバッハさんは鎧もつけず槍だけを持ってノエルを追いかけたのだろう。
そして見事にノエル救出に成功したのだ。
威風堂々、凛としたクララ・アンスバッハの美しさに俺はしばし目を奪われてしまった。
リアたちを家に送り届けて、アンスバッハさんと一緒に屋敷まで戻ってきた。
契約交渉の続きをしなければならなかったからだ。
応接間でお茶を頂いてようやく落ち着くことができた。
「多数のゴブリンを討ち取ってくれたと聞いた。改めて礼を言わせてくれ」
「いえ……自分でも必死でしたので。それよりもよくノエルを助けられましたね」
「ふっ、私とて必死だったさ。領民を守れんでは領主とは言えんからな」
クララ・アンスバッハか……。傲慢な貴族なら契約なんてしたくなかったけど……。
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