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まるで夢を見ているようだ。
とにかく落ち着くんだ俺!
一歩も動かずに慎重にザックをおろして足の間に挟む。
天蓋に入れたヘッドランプを取り出してスイッチを入れた。
LEDの白い光に照らされて辺りの様子が露わになる。
先程の部屋とは全く違う場所だった。
一体どうなってるんだよ?
ここは……どこかの遺跡?
慌ててスマートフォンを取り出す。
電波は圏外だ。
GPSも現在位置をロストしてしまっていた。
「マジかよ」
独り言でも呟かずにはいられない。
冬山に登るのだからある程度の不測の事態は想定していたし、そのための準備もしてきた。
だがこんな事態は完全に想定外だ。
ザックを背負い直し、ヘッドランプを頭につけ、手にはピッケルを握りしめて、ゆっくりと通路を移動する。
何が起こったのか分からないがこの場所に留まっても救援は望めそうになかった。
せめて外に出て、電波の届く範囲に移動しなければ。
「△%$#!!!」
闇を切り裂いて女の人の叫び声が石壁に響き渡った。
俺以外の人がいるのか。
マイナーなルートを登っていたから期待していなかったが、仲間がいるのは心強い。
でも何を言っているかはわからなかったが、雰囲気から察するにトラブルのようだ。
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