7.お前を抱いて異世界へ

4/7
前へ
/938ページ
次へ
早いところ身体強化とか剛力とかそういう(たぐい)のスキルをとりたいものだ。  スマートフォンのアラームが深夜の駐車場に鳴り響いた。 若干焦りながらタイマーをオフにする。 あと5分で召喚の合図だ。 悪いことは何もしていないのだがびっくりした。 バイクと自分にザイルを結び付けている姿をご近所さんには見られたくない。 いや、ご近所さんに限らず誰にだって見られたくないよ!  警察に見つかったら職質は免れないだろうし、どう言い訳をしていいかもわからない。 異世界に持っていくんですという真実より、バイクを縛るのが好きな性癖なんですと言ってしまった方が信じてもらえそうだ。 残り3分。 トイレに行っておけばよかった……。 でも俺とバイクは堅くザイルで結ばれている。 今から結び目を解いてトイレに駆け込んだら放尿の途中で召喚される可能性が高い。 そんなことになったら狭間の部屋は大参事だ。 イケメンさんに怒られるかもしれない。 ものすごくしたいわけではないのでそのまま時間が過ぎるのを待つ。 後2分。 俺はこんな時間に、くそ寒い中で何をしているんだろう?  ……つい客観的に自分を見つめてしまった。 中腰でバイクを抱えて、しかもザイルを巻き付けてるんだぜ。 俺ってばとってもアホッぽい。 残り1分。     
/938ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8083人が本棚に入れています
本棚に追加