8.火を焚いて君を待つ

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一つあるとすれば食事が貧しいことくらいかな。 村の人たちはこんな少ないカロリー摂取量でよく頑張れると思うよ。 基本的に薄い野菜のスープと岩のように硬いパンか麦粥(むぎがゆ)のみだ。 肉を食べるのは本当に稀みたいだな。 俺はたまに空間収納から食べ物を出して隠れ食いをしている。 いろいろ入れてきて本当に良かった。 こんど送還されたときはもっとたくさんの食料を詰め込んでおこうと心に誓った。  それなりに充実した毎日を送っているのだが、エッバベルク村には娯楽がない。 たまに休み時間を貰ってもやることが少ないのだ。 一番の気晴らしは散歩だ。  夕暮れの村を歩いているとすれ違う人みんなが俺に声をかけてくれた。 実をいうと、俺はいま村のちょっとした英雄なのだ。 先日のゴブリン撃退戦の功労者として人気者になっている。 俺の使える魔法は今のところ麻痺(パラライズ)だけだが、魔法を使える人自体が少ないので、それだけでも一目(いちもく)置かれるのだ。 「コウタさーん!」 通りを歩いていたら、ラガス迷宮から戻ってきたリアに出会った。 パッと見た感じでは目立った負傷はない。 地球の傷薬はこちらの世界ではとんでもなくよく効くので、リアにはステロイド軟こうを渡しておいた。役に立っているかな。     
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