9.クララの危機

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9.クララの危機

 軍手って便利だよな。 作業をする時にはめれば怪我を防止できるし、手も汚れない。 なんでも旧陸軍に採用されていたから軍手というらしいぞ。 軍用手袋を略して軍手だな。 空間収納から軍手を出して、枝を集めた。 雪の上では焚火がうまく燃えないので、太めの枝を手斧とノコギリでぶった切って並べ、焚火台(たきびだい)にする。 それから手持ちのガストーチで火をつけた。 こいつはポケットサイズなのに1300度の火炎が出せる優れものだ。 充填するガスも卓上カセットコンロのカートリッジが使えて便利だ。 程なくして枝に火がつき凍てつく寒さが和らいだ。 自分も冬山を登るくらいだから寒さには慣れているつもりでいたが、クララ様にはとても(かな)いそうにない。 氷点下8度の寒さの中を冷たいプレートアーマーをまとって平気な顔をしているのだ。 騎士というのは凄い精神力をしているのだな。 当分クララ様は帰って来ないだろう。 長めの枝で薬缶(やかん)をひっかけてお湯を作っておくか。 枝ももう少し集めたほうがいいな。 周囲を警戒しながらせっせと枝を集めた。  クララは森が少し開けた場所を見下ろせる斜面に立っていた。 矢を打つのに邪魔な枝は周囲にない。     
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