9.クララの危機

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既に鹿の群れは見つけていた。 今、ハスラーが風上から鹿たちを追い込んでいるところだ。 優秀な猟犬であるハスラーならきっとこの場所に鹿の群れを追い込んでくれるはずだ。 自分は風下のこの場所で待てば鹿は必ずここを通るはずだった。  大地の下月(12月)も残すところあとわずかだ。 今年は雪が早く寒さも厳しい。 プレートアーマーを通して体に染み入る冷気は尋常ではなく、クララは思わず身震いした。 先程まではコウタがいたので気を張ってそんな姿を見せないようにしていたが、一人になると寒さに震えがきた。  それにしても……とクララは考える。 コウタは期待以上の従者だった。 自分たちの文化とは少し異なるが、教養もあれば、礼儀作法も知っている。 便利な魔道具をいくつも持っていたし、空間収納や麻痺魔法まで使えるとは思っていなかったからだ。 そして何より仕事に取り組む姿勢が真面目だった。 コウタは「日本人ならこんなもんですよ」と謙遜していたが、その態度がクララにとっては好ましかった。 リアに初めて召喚術式を教えてもらったときは半信半疑だったが、コウタと契約できたことは誠に僥倖(ぎょうこう)だったと思う。 時空神に改めて祈りを捧げなければなるまい。     
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