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魔力を温存するために最近魔法を使っていなかったが、寒さが限界を超えそうだった。
このままでは低体温症になると判断したクララは身体強化魔法を自身にかけた。
これで筋力や反射能力が高くなるだけでなく、代謝があがり体温も高くなるはずだ。
あと一時間はこの場所で獲物を待ち続けることも可能だろう。
明後日には一度コウタを元の世界に還してやると約束している。
召喚に必要な魔力は自分の全魔力の40%ほどなので余裕はあるのだが、不測の事態に備えてなるべく魔力は温存しておきたかった。
6日に1度は元の世界に還すというのはコウタとの契約で決まっているので破ることはできない。
遠くから風に乗ってかすかにハスラーの吠える声が聞こえた。
うまくやってくれているようだ。
弓に矢をつがえて静かに呼吸を整える。
ハスラーの声がどんどん大きくなってきた。
獲物を狩る高揚感が体の奥底から湧き上がってくる。
命を刈り取る行為ではあるのだが、クララはこの瞬間が好きだった。
普段から理性的に過ごしているクララが生物としての本能に身を任せ、開放的な気分に浸れるからなのかもしれない。
先頭を走る牡鹿に狙いを定めて弓を引き絞る。
狙うのは前足の付け根あたりの心臓周辺だ。
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