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「これは異世界から俺が持ってきたものですよ」
そういってコウタは蜂蜜を見せてくれた。
ペコペコとへこむ不思議な素材の容器に蜂蜜が入っている。
コウタが見せてくれるものは見たこともないものばかりだ。
「蜂蜜のような貴重なものを使わせてしまったのか。すまない」
「いえいえ、これは輸入物の蜂蜜だから安いんです。お気になさらずに」
輸入されたものが安い?
よくわからない。
ふつうは輸送費がかかるぶん異国の品は値段が上がるものではなかろうか。
「この後はどうされるんですか?」
「当然狩りを続けるつもりだ。今回の狩りは行軍訓練も兼ねているのだからな。どうした? もう辛くなったのか?」
「いえ、そうではありませんが、午後から天候が荒れるようです」
見上げた空は青く晴れ渡っている。
気温は低いが天気が崩れる様子はどこにもなかった。
コウタが嘘をつくとも思えなかったが俄かには信じがたい。
「よく晴れているようだがな」
「確かにそうですが、西から低気圧が近づいています。午後から雪が降り始め夕方には吹雪になるはずです」
「わかるのか?」
「はい。自分の能力の一つです」
そこまで言い切るのならば嘘ではないに違いない。
森の中で吹雪という事態は避けるべきだ。
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