1.不思議なことは唐突に起こる

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頭にはヘルメットみたいな兜をかぶり、背中にはマントを付けていた。 腕を見ると負傷していて血が少し出ている。 あの蜘蛛にやられたのだろうか。 傷は深くなく少し切れているだけだ。 ザックからファーストエイドバッグを取り出した。 山に登る時は一応の備えとしていつも常備しているものだ。 傷薬やテーピング、三角巾など簡易医療セットが入っている。 傷口を水筒の水で洗って傷薬を塗っていく。 「ルカルセ」 それ、何回か聞いたな。 きっと「ありがとう」だろう。 「どういたしまして」 あれ?  どうなっているんだこれ?  薬を塗った端から傷が治っていくぞ!  俺もリアも同じようにびっくりしている。 これは特別な薬じゃない。 街の薬局で売っている普通のステロイド系軟膏だ。 評判はいいけど魔法の薬なんかじゃないはずだ。 一体全体どうなっているんだ。 おかしなことが多すぎる。 蜘蛛は巨大だし、薬は効きすぎるし、結局ここはどこなのかも未だにわからない。 聞きたくても言葉が通じない。 やばい、猛烈に不安になってきた。 とりあえずこの建物から出た方がいいだろう。 ジェスチャーで建物から出たいと表現するがうまくリアには伝わらなかった。 次に現在位置を把握しようと地図を取り出す。 山に行くときに地図は必携だ。     
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