Karte1:美人になる薬

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「……まったく、これだから人間は」  ――これが、お客様が帰った後で発したキュウの言葉でございます。 「理想を求めるのに対して代償が必要なのを、愚かな人間は知らない」  その声はとても冷たく、心なんかはこれっぽっちもないものでした。彼もまごう事なき人間なのに、大変おかしな話です。 「笑うなピクシー」 「これは失敬」  私は笑うのをやめて、キュウの事を気付かれないよう、そっと見ます。  薬を一人で沢山運び、並べているところでした。 「キュウ、私もお手伝い致しますよ?」 「そうか、それは助かる」  キュウは少し嬉しそうに、私に指示を出してくれました。 「……なんでも願いを叶えてくれる薬、か」  ふとキュウは、ネックレスの薬を撫でながらそんな事を呟きます。 「どうされました?」 「……いや、何でもない。それよりまだ今日は始まったばかりだ。さっさと薬並べるぞ」 「はいはい、仰せのままに」  キュウの悲しげな顔を、私は見なかった事にして仕事に戻りました。  今日はあとどれくらいのお客様がくるか、とても楽しみでございます。  本日も奇し屋、営業中でございます。
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