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そんな裏の世界に、どうやら最近新しい顔が入ったようです。それは、一人の少年。
まだ歳は若く裏には不釣り合いな、どこか可愛らしさが残る少年です。容姿は小奇麗で……白髪の髪と赤色の瞳が、裏の暗い社会では目立ち映えます。
元々赤色の瞳がこの世界では珍しい、というのもあるかもしれません。けれども、一個人の感想を言わせてもらえるのでしたら、そんな彼の赤色が私は嫌いじゃないです。
もちろん、何故彼のような少年が……と、裏では噂になりました。いえ、なりましたでは過去形になってしまいますね。噂になっております。が、正しいでしょうか。
どこかの貴族で追われた身なのでしょうか? はたまた、罪を犯した咎人なのでしょうか?
本当の事は、誰にもわかりません。彼は何があっても、自分の事を話した事がないからですから。
わかる事は、不思議な色をした薬のネックレスをいつもしている事くらい。
彼は自分の身を明かさず、ただただ裏に生きているのです。
彼は何をしていると言ったら……そうですね。
強いて言うなら、『薬を売っている』事くらいでしょうか?
……えぇ、薬です。
そんな、拍子抜けた顔なさらなくても。
事実なのですから。彼はいつも路地裏にひっそりと佇む、可愛らしいお店で薬を売っているのです。これがまた評判な事で。なんでもその薬は――
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