Karte0:始まりでございます

2/3

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 そんな裏の世界に、どうやら最近新しい顔が入ったようです。それは、一人の少年。  まだ歳は若く裏には不釣り合いな、どこか可愛らしさが残る少年です。容姿は小奇麗で……白髪の髪と赤色の瞳が、裏の暗い社会では目立ち映えます。  元々赤色の瞳がこの世界では珍しい、というのもあるかもしれません。けれども、一個人の感想を言わせてもらえるのでしたら、そんな彼の赤色が私は嫌いじゃないです。  もちろん、何故彼のような少年が……と、裏では噂になりました。いえ、なりましたでは過去形になってしまいますね。噂になっております。が、正しいでしょうか。  どこかの貴族で追われた身なのでしょうか? はたまた、罪を犯した咎人なのでしょうか?  本当の事は、誰にもわかりません。彼は何があっても、自分の事を話した事がないからですから。  わかる事は、不思議な色をした薬のネックレスをいつもしている事くらい。  彼は自分の身を明かさず、ただただ裏に生きているのです。 彼は何をしていると言ったら……そうですね。  強いて言うなら、『薬を売っている』事くらいでしょうか?  ……えぇ、薬です。  そんな、拍子抜けた顔なさらなくても。 事実なのですから。彼はいつも路地裏にひっそりと佇む、可愛らしいお店で薬を売っているのです。これがまた評判な事で。なんでもその薬は――
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加