0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
とても綺麗な、琥珀色の液体が入った瓶でした。それを私がキュウにお渡しすると、彼は私の頭を撫でながら液体を少し出します。こういう時だけ優しくするなんて、キュウは典型的に悪い男だと思うのですよ。いつか変な女が寄ってきそうで、私は心配でございます。思いませんか?
けれどもキュウはそんな私の気持ちに気付くわけもなく、元々目の前に置いてあった薬達とお渡しした液体を何やらすり鉢で混ぜ合わせております。
そう、これが彼の作る薬なのです。
彼の作る薬はどんな怪我でも治る。
彼の作る薬はどんな病気でも治る。
そんな風に、言われております。
それはほとんど事実でございます。そう、ほとんどです。
何が違うと聞かれますと……そうですね。
どんな病気でも、と言うのは嘘になります。
たとえ万能の薬を作ろうと、人に『死』は付き物でございます。キュウの作る薬が治せるのは軽度の病気だけです。進行が進んだ末期のものは、癒すことしかできません。
そしてそれを、キュウは最も理解し――同時に、自分の無力さによく苦しんでおります。
けど、キュウ。
私はちゃんと、知っていますよ。
「……なんだよピクシー、さっきから俺の顔見てニヤニヤして」
「いえ、何でもございません、」
だって、笑ってしまうのですもの。
貴方は自分の無力さを一番理解し、それと同時に自分の作る薬美しさと恐ろしさを自覚していない。
だって、貴方の作る薬は――
最初のコメントを投稿しよう!