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キュウはそこまで言うと、悲観的な目はどこへやら。とても意地悪い顔で、お客様に囁きます。
「ですが、他の薬ならございます。さて、貴方はどの様なお薬をお望みですか?」
そう言うとキュウは、懐から一つの瓶を取り出しました。瓶の中には、数十粒の錠剤が入っておりました。とても綺麗な、空色の錠剤です。
「こちらの薬は、『美人になる薬』です。どんな人間でも絶世の美男美女になれます」
……そうです。これが、キュウの薬。
通称『裏薬』と呼ばれておりますこの薬、例えば彼女の願いの一つである『容姿が完璧になりたい』といったものを叶えてくれる薬であります。人間は欲深いものですが、叶えられるのは一つだけ。その一つを見極めて売るのが、キュウのお仕事でございます。
そしてこのお客様に合う薬が、この空色の錠剤となるのです。
「そ、その薬、ください!」
お客様は突然、人が変わったかのように食いつきキュウから薬を奪い取ろうとしました。
これだから、人間は貪欲な事でございます。本当に、笑ってしまうくらいに。
キュウもそれを見て、くすくすと笑いながら掌で薬を転がします。
「ですが、一つお気をつけください」
キュウのその声は、言葉とは裏腹に忠告の気持ちなどない、まるで楽しんでいるかのようでした。
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