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持ちきれなかった娘の荷物をすぐにアパートに送ると約束する。
私はその荷物の中に一緒に入れるための食べ物を買いに行った。
娘が好きな日持ちのする食品を選んだあと、何気なく他の陳列棚を眺めていると懐かしい物が目に入る。娘と一緒にお風呂に入るとき、たまに入れてやると喜んだ、溶けると中から小さなマスコットが出てくる入浴剤。私はそれを買うことにしてカゴに入れる。子供だましだけど気晴らしになるだろう。それからバラの花びらのような形のバスソープ。そして発汗作用のある入浴剤。これだけ入っていれば、自分の家でもたまには湯船に浸かる気になるんじゃないかと思った。
家に戻り、ダンボールに荷物を詰め、ぎゅうぎゅうに収まった物たちに向かって娘に声をかけるように「頑張れ」と言う。
白い便箋に「泣きたくなったらお風呂につかりなさい」と書く。
荷物の一番上に便箋を置き、私は箱を閉める。
ガムテープを貼ろうとしていた手を止め、数秒悩んで箱を再び開ける。
便箋を取り出し、「どうしてもだめな時は帰っておいで」と書き足す。
泣きそうになったので慌てて便箋を荷物の上に乗せる。
蓋を閉め、ガムテープを貼って止める。
箱を撫で、深呼吸をする。
「よし」と一つ、私はうなずく。
了
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