4.プリズム滲んで

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「そう言えば、倉持くんは休みが無いほど仕事が忙しいんですね」 「仕事っつーか……ほとんど金になんねぇことばっかだけどな」 そこまで言ってしまって、俺はしまったと思った。あまり自分の仕事の話はバンドメンバー以外の友人や知人にはしない主義だったからだ。理由は簡単、哀れみや心配の視線を向けられるのがうざかったから。でも、ここまで聞いてしまった縫山が黙っているとも思えなかった。 俺は頭を掻きながら、縫山に打ち明けることにした。 「俺、一応ミュージシャンなんだよ。バンドでベースやってんだ」 「そうなんですか」 縫山がうなずきながらも、即座に首を傾げた。そんなに忙しいのかという彼の疑問には答えていないから仕方が無い。 「つってもまだインディーズの小さな事務所だし、一人で食っていくのがやっとって感じで……こうやって休みの日はライブやら、営業活動やら、練習やらで活動しねぇと。まだ売れてるわけでもないからな」 そう口にしたあとは、無意識の内に耳を塞ぎたい気分に陥った。代わりにぎゅっと目を瞑るが、いつまで経っても想像していたリアクションは返って来ない。俺は恐る恐る目を開き、ちらりと縫山を見やった。 「笑わない、のか?」     
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