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第一章 桜散る、春
『御入学おめでとうございます』
壇上に掲げられた垂れ幕の下で、校長先生が読み上げる歓迎の言葉を、どれだけの新入生が聞いているんだろう。
体育館に規則正しく並べられたパイプ椅子が、そこらじゅうでギシギシと音を立てる。期待と不安。きっと誰もがそんな気持ちを抱いているんだと思う。
私は、淡々と流れていく言葉に耳を傾けて、静かに胸に沈めていた。
「これから始まる中学生活に目標を見つけてください。部活でインターハイに出場する。無遅刻無欠席を目指す、などです。そして何より、感謝の気持ちを忘れないでください。育ててくれた保護者の方に、声をだして感謝の言葉をかけてください」
……感謝。
クラス担任の挨拶に切り替わったタイミングで、私はこっそり、保護者席に振り返った。
紺のスーツ。桜色のワンピース。
綺麗な服に着飾られた大人達が頬を緩めて座っている。そんなかしこまった人達の中に、渋い顔をしたパパを見つけた。
伏し目がちに俯いて、泣いているみたいに。
「──それでは教室に移動します。1組から前の人に続いてください」
先生の指示に一斉に立ち上がる周囲の生徒。私も慌てて腰を浮かせて、前の女子の後を追った。
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