第一章 桜散る、春

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春の太陽が眩しかった。 空を見上げれば、どこまでも続く青が広がっている。 冷たい体温を暖めてくれるような柔らかい日差しだった。 隣の鉄棒に手をかけて、地面を蹴り上げて私も回った。地面に擦れないように足を曲げて、お腹に力を込めて何度も回った。 ツギハギの名札を揺らして。 「おぉ、さすが中学生だな」 「でしょ? パパには負けないよ!」 いろんな幸せがある。 ここに確かな愛がある。 私にはパパがいる。 大好きな、パパがいる。 なんにも恥ずかしくなんかない。 一番変で、一番特別な名札は、私の宝物。
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