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「旨い! 真規の作るごはんはおいしいなぁー」
食卓に並ぶ、焦げて痩せ細ったシャケにかぶりつき、べちゃべちゃに水を含んだご飯を飲み物のように流し込みながら、パパは大袈裟に声を高揚させる。
そんなパパを、私は黙って見ていた。
見え透いた嘘だってこと、バレバレだよパパ。それが余計に傷つくんだってこと、いつになったら気付くんだろうか。
はぁ、と息をつきながら、シャケに目を落とす。
……でも、もしかしたら。見た目はアレでも、パパが言うように味は……?
わずかな希望を抱いて箸を浮かせ、シャケを一口かじってみる。固い。そして口の中に広がっていく焦げ臭さに、顔が歪んだ。
慌ててお茶を喉に流し入れて、苦味を消し、なんだか騙された気分になった。一人勝手に。
「いや、ほんとだよ。1週間前に比べれば、かなり美味しくなったって思うよ」
うんうん、とずっと笑顔を崩さないまま、パパは味も見た目も不格好なご飯を食べ続けてくれた。
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