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「5組を担当する相澤といいます。良いクラスになれるよう共に協力しあって、素晴らしい一年を過ごしましょうね」
教員二年目だという、長い髪をハーフアップにしたまだ若そうな女性の担任が、規則正しい中学生活について足早に説明していく。私は話半分で聞きながら、廊下の窓の外を眺めていた。視界に映る、すぐそばに植えられた桜の樹。
新しい環境。
顔も名前も知らないクラスメイト。
パパを支えていく、強さ。
大丈夫、きっと、うまくやっていけるよ──。
風に揺れる淡いピンク色の花が、これから始まる新しい生活に、エールを送ってくれているみたいだった。
「……というわけで、早く皆が仲良くなれるように今から一人ずつ自己紹介をしてもらいます。その場で立って挨拶をしてください」
耳に届いた相澤先生のその言葉に、思わず視線を戻す。
静かだった教室がさざ波のようにざわめき立ち、近くの子と顔を見合わせたり、俯いて頭を抱えたり、みんな不安そうに視線を泳がしていた。
……自己紹介、か。
「じゃあ、グラウンド側から始めましょうか」と、先生の指示でそれは否応なしに進められる。
ホッとした。一番遠い廊下側の自分は、まだまだ先だ。
「……えっと、俺の名前は──」
「その名札、変じゃねぇ?」
挨拶を始める男子生徒の声に紛れるように、すぐ側から低い声が飛んできた。
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