第一章 桜散る、春

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「ツギハギみてぇ」 せせら笑うように、馬鹿にするように 吐き捨てるような声で呟いたのは──さっきの男子だ。 睨んだつもりはなかったけど、男子は私の目から逃げるように、わざとらしく、気だるそうに椅子にもたれかかってそっぽを向いた。 そいつの全身を見れば、学ランからはシャツがはみ出て、新品の上履きが履き潰されている。 ……こういう奴、大っ嫌い。 「気にしない方がいいよ」 前の女の子が、こそっと、手を添えて耳打ちするみたいに私に伝える。大きな目をぎゅっと細めて、嫌な奴だね、と付け加えて。 彼女の優しさに、沸き上がっていた体の熱が治まっていく。 ……うん。こんな事、どうってことない。 「これ、私のパパが縫ってくれたんだ」 気にしてないよ、という意味もこめて、出来るだけ明るく言った私の言葉に、女の子はきょとんと目を丸くさせた。 次の瞬間、ぽん、と肩を叩かれて 「挨拶、次だよ」と、後ろから声をかけられる。 ……来た。 深く息を吸いこんで、両手をきつく握る。 口元を引き締めながら、椅子から腰を浮かせた。
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