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「ツギハギみてぇ」
せせら笑うように、馬鹿にするように
吐き捨てるような声で呟いたのは──さっきの男子だ。
睨んだつもりはなかったけど、男子は私の目から逃げるように、わざとらしく、気だるそうに椅子にもたれかかってそっぽを向いた。
そいつの全身を見れば、学ランからはシャツがはみ出て、新品の上履きが履き潰されている。
……こういう奴、大っ嫌い。
「気にしない方がいいよ」
前の女の子が、こそっと、手を添えて耳打ちするみたいに私に伝える。大きな目をぎゅっと細めて、嫌な奴だね、と付け加えて。
彼女の優しさに、沸き上がっていた体の熱が治まっていく。
……うん。こんな事、どうってことない。
「これ、私のパパが縫ってくれたんだ」
気にしてないよ、という意味もこめて、出来るだけ明るく言った私の言葉に、女の子はきょとんと目を丸くさせた。
次の瞬間、ぽん、と肩を叩かれて
「挨拶、次だよ」と、後ろから声をかけられる。
……来た。
深く息を吸いこんで、両手をきつく握る。
口元を引き締めながら、椅子から腰を浮かせた。
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