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「及川真規です。私に母親はいないけど、パパと二人、幸せに暮らしてます。みんなと仲良くなりたいです」
さっきまで騒がしかった教室が、シンと静まり返った。
みんなが私を見てる。顔を寄せあい、ヒソヒソと話す声も聞こえた。
突き刺さる視線を全身に感じながら、椅子に座る。やっと息を吸った時、突き破りそうな心臓の鼓動に気がついた。
……これでいいんだ。
絶対に言うって、決めたんだから。
顔をあげて、口の端をクッと吊り上げて、何か問題でも? というような澄まし顔で教室を見渡した。
一瞬、目があった。でも、すぐにそらされる。教卓に座る相澤先生の気まずそうな目が、ぎこちなく空中を泳いでいた。
「よろしくね、真規ちゃん」
全員の自己紹介が終わった後、さっきの女の子が私に振り返る。
優しく笑う彼女は、由美ちゃん。
きっと仲良くなれる。 多分、ううん、絶対。
「さっきはありがとう」
顔いっぱいに笑顔を広げて、そう返した。
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