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「一応聞いておくけど、その協力者って僕?」
豪代進は少しばかりおどけた様に言った。
「勿論そうです。」
と主人。
「いやいや、そりゃ係長は職場の先輩として尊敬してますけどね……。そんなに仲が良いという訳ではないですよ。」
「それは恋人のあらぬ噂を流したからと言う事でですか?」
「ん?まぁ、それもあります。」
「しかし、それは協力者であることを隠す為の芝居かもしれませんよね?」
「な、なんでそこまで?根拠はあるんでしょうね?」
豪代は憮然として睨んでいる。
「勿論。根拠がなければただの言いがかりですからね。」
そう言って主人はチラリと黒瀬達也の方を見た。
黒瀬達也は訳がわからず「え?」という顔をした。
「黒瀬達也さんは西村社長を雪の中から風呂場の中に引き入れましたよね?その時大変ではなかったですか?」
唐突な主人の質問に黒瀬達也は面食らったが直ぐに何やら思い出す顔になった。
「確かに大変だった。何せ体半分埋まってるんだから一苦労だったよ。」
「その時になにも持ってなかったのを確認してますよね?」
「ああ、確かに。」
「体に隠し持ってたとしたら弾みで落ちますよね?雪の中に落ちたら風呂桶には入りませんし、風呂桶に落ちたら音で気がつきませんか?」
「ま、まぁ、確かに落ちたら気がつくだろう。ポケットに入ってたのかもしれない。」
「そうですね。しかし、ポケットにいれてあったとしたら逆にそこからこぼれ落ちるとは考えにくくないですか?」
「言われて見ればそうかもしれない……え?」
「そう、そうなると風呂にお湯を入れている間に忽然と携帯が現れた事になります。おかしいですよね?」
「まさか……。」
黒沢達也は絶句した。
「それが出来るタイミングは一度しかありません。」
そう言って主人は豪代進に向き直った。
豪代進は黙って見返していた。
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