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「してなかったじゃない。」
「いや……たしかに…。おかしいな。」
そこにどこからかまた、懐かしのメロディが流れてきた。
踊る大捜査線のメロディだ。
もはや誰も驚かなくなって池照刑事に注意が向く。
それに気付いてか、池照は少し恥ずかしそうに携帯を耳に当てた。
なんの照れだよ!
私が心のなかで彼にツッコミを入れたことは誰も知らない。
「あ、はい、池照です。……え?本当ですか?助かります。……はい。お願いします。」
「どうしたんや?」
岩井刑事が腰に手を当てて要点だけ言えよと言外に言ってる様な目で見た。
「如鏡さんの言った通り打撲痕の繊維の隙間から微量ですが、汗の成分と細胞の角質が検出されました。」
「そうですか。」
主人はさして驚いた風でもなくそう言った。
「これからDNA鑑定をしますので全員御協力願えますか?」
「それはするまでもないでしょう。」
主人がそんな事を言い出した。
「何故です?」
と池照。
「もう、犯人がわかっているのですから。」
当然と言うか、やはり全員が驚きの表情で固まった。
まるで、温かい凍死体みたい。
私は不謹慎だなと反省してその夢想を払拭した。
しかし、一つだけ言える事は……誰かが嘘をついている。
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