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ご対面です
***
誰でも一度は憧れると思う。一人暮らし、新しい生活。何もかもリセットして、一から始めたくなることってあるはず。
「これが鍵か……」
これから入居するクリーム色の壁と赤い屋根の可愛らしい外観の建物を眺めながら、わたしは決意を新たにする。
高校生のわたしは一人暮らしを夢見たけれど、現実はルームシェア。お父さんが勝手に決めて、会社の上司の娘さんと一緒に暮らすことになるみたい。
本当に勝手過ぎる。娘に相談なく決めるなんて。しかも会うのは今日が初めて。
そりゃあ、家を出たいと駄々をこねたのはわたしだから、何も言えないんだけれど。
お父さんが決めたこの物件しか認めない。相手を不愉快にさせることも駄目。年上だから言うことをしっかり聞くこと。
そんな厳しい条件でものむしかなかった。過保護な親から離れたかったから。
上司の娘とか逆に緊張するし、下手したらお父さんの今後に関わるかもしれないのに!
それを言ったら、
『翼はよく出来た娘だ。そんなことにはならんだろう?』
って頭を撫でられた。
娘を信じすぎ。しかも、もう高校生なんだから撫でるのやめて欲しい。確かに身長一四八センチで撫でやすいだろうけれど。
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