本編第十二話の裏話 市民プールとラサの悲劇(ライトノベル版)

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「ウチ? 天童(てんどう)楽美(らみ)、大学一回生の二十歳やで」 「おお、関西弁なんだ。東京に来たのは、女優目指してとか?」 「目指しとるんは弁護士。東京に来たんは小学生の頃やで」 「おお、弁護士! 凄い頭いいんだ?」 「ありがとさん、弁護士になれたら、なんかやらかしても弁護したるで」 「じゃ、しゃあ、通信デバイスの交換を! 未来の弁護士先生!」 「しゃーないなぁ、依頼人一号として、特別やで?」  ズキューンって音が聞こえそうなくらい破壊力の高い仕草ね。 -  カキ氷を食べ終わって、飲み物はテーブルに。 「さっ、せっかくだから水遊びしないとね」 「ビーチボールやります?」 「いいわね。一応、言っとくけど、お触りは禁止よ?」 「「「了解です!」」」  ラサ君以外の男の子と遊ぶのなんて初めてかしら?  私は科学一筋、ラブレターは全部ゴミ箱行きだったからね。  学生時代を思い出す。 「冷たっ、気持ちいい~♪」  マナミちゃんが暫く足をバチャバチャさせて、水に慣らしてからプールに入る。 「みんなも早く!」 「ヒャッホウ!」 「オッケー!」 <PiPiPiーッ> 「横から無闇に飛び込まないで下さい!」  監視員に叱られちゃって、でも若者達が、こうして元気に楽しく遊べる平和を取り戻さないと! 「そういや、準備体操忘れとったわ‥‥まイッカー」  [まイッカー]というのも、そのラノベで通称イカ語と言われてるわね。  少し身体を捻ってから、飛び込み台から周囲を確認して綺麗に飛び込むラミちゃん。 「おおー、イカス!」  さて、私も‥‥。 「アイリさん、怖くないから一緒に、ね?」 「は、はい‥‥」  プールに入ってしまえばアイリさんが幽霊だと気付かれる心配も無いわね。 「プールをお楽しみの皆さん、七人でビーチボールするので、場所を借りますね」  場所を確保して輪になる七人。  アイリさんの両サイドは私とマナミちゃんでガード。  ラミちゃんは男の子の間に。  ビーチボールがふわりと飛び交う。 「えいっ」  アイリさんは目を瞑って念動力でビーチボールを弾いている。 「なあ、ちょいジャンケンしようぜ」 「なんだよ?」 「席替えだよ!」  私の隣の男子二人は、それぞれ、片方に私とラミちゃん。  一人だけ、マナミちゃんとラミちゃんの間。  たぶん、これが原因ね。
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