SCENE10:リーズという存在(もの)【晟】

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SCENE10:リーズという存在(もの)【晟】

 聖が呼ばれた理由はこれだったんだ。イベントホールの事件や、智孝が言っていた次の任務(・・・・)のメンバーに入っていないことに疑問を抱いていたが、聖の語る魄や朧についての説明を聞いて納得した。中でも、朧と魄は元々一つ──鬼の力であったということに、有羽は食いつくように聖へと質問する。 「ってことは、魄はその物体のもつ波動を、それ自体を動かすエネルギーに変換するってこと?」 「そう。そして、魄は特に人のマイナスの言葉がもつ波長に合いやすい。だからその言葉から作られている感情自体を増幅させて行動に移すためのエネルギーとなるんだ。とりつかれた人はその間の感情や感覚、記憶はほぼなくなり、欲を満たそうと躍起になる。まさに、鬼のようにね」 「確かに、『鬼』は感情が動かず非道な様子を表すこともあるけど、一つの感情に没頭している状態を表す言葉でもあるわ」  彩の呟きに聖は頷いてその意見を肯定する。綺麗にまとめてある説明文に目を通しながら、晟も自分の考えを口にした。 「魄とは反対に、朧は自分以外の波動を取り入れてプラスの感情にし、今度はそれを表に出すんだな。『気』や一つの現象として具体化もできるエネルギー、か。つまり、魄がマイナスの力で肉体を動かし、朧がプラスの力で精神を司るってイメージ?」 「そうだね」 「朧を使ってる時は、俺たちの感情もなくなってるってことか?」  その質問には少しだけ陰りを見せて聖は答える。
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