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SCENE9:興味【神谷聖】
「魄は、私達にとって必要?」──講義の途中、そう発言した彼女は今、自分の目の前で親友でもある樫倉晟と談笑していた。
晟が教室内に響き渡るような声を上げたため、その場にいた全員の注目を一斉に浴びた。しかし、そんな晟から皆の視線を外すように、有羽はこう質問したのだった。時間の関係上、講師である智孝の答えを聞くことは出来なかったが、代わりに次までの宿題となって終わった。
今まで、敵や悪いものとして認識される存在に「必要であるか?」を問う人間は少ない。必要かどうかではなく、どう排除すべきかを優先して考えられてきた。しかも、字守を育成する機関であれば、どう魄を消滅させるか、しか考えない連中がほとんどだと思っていた。
現に、自分が所属している魄の研究施設でも、どう人間に被害を出さずに浄化するか?という方法しか考えられていない。研究員の中にも魄を知っていく内に、己のしていることの正しさに疑問を持つ者はいるだろう。自分も恐らくその類に入ると思った。しかし、今まで自分と同じような思考をもつ人間に会ったことがなかった。
いや、正確には一人しか会ったことがなかった。その一人と彼女との会話はどんなものだろう?と、神谷聖は声をかける。
「あ、聖。ちょうどよかった。お前のこと紹介しようと思ってたんだ」
「初めまして、神谷聖です」
「聖とは緋華見でずっと一緒だったんだ。中学くらいか?」
「そうだね」
「で、今は臍央にある研究所で魄の研究をしてる超エリート」
『超エリート』などと余計なものをつけて晟は紹介した。
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