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「こちらは玖堂有羽ちゃん。見た目通りかわいくて明るくて元気。誰にでもすぐに打ち解けられて、心が強い人ね。私の方が年上だけど、有羽の方がずっと大人だわ。洞察力とそれを表現する能力が高いから、私も助かってるの。言葉だけではどうしても伝わりにくいニュアンスなんかを、演技として動きで見せてくれるわ。だから、有羽も表現の先生ね」
さすが言葉を学んでいるだけのことはあり、とても魅力的な紹介だった。紹介された有羽は目をぱちくりとさせて言葉を失っていた。里紗に声をかけられて我に返ると、恥ずかしそうに笑いながらお礼を口にする。
「びっくりしたー。あまりにも褒められたから誰のことかと思っちゃった。ありがとう、彩ちゃん。ね?彩ちゃん、すごいでしょ?こんなに人のこと褒めることができて。いいところを見つけてもらいたかったら彩ちゃんに言ってもらう!」
「それは、相手が有羽だからよ」
「彩ちゃん」
独特なテンポでお互いを褒め合う二人を指しながら「この二人、たまにこうしてラブラブモードに入るんでよろしく」と里紗は言った。
聖は今まで経験したことのない会話に、今朝、晟が言ったことを思い出した。
『面白い奴らが多いからさ、きっと聖の世界ももっと楽しくなるよ』
こういうことなんだな、と思う。自分の世界を広げるには、視野を広げることと、人の世界を見ることが必要だ。晟は、たまにそういう気付きを僕にくれた。昔自分を暴力から助けてくれた時もそうだった。
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