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兄と呼び、そう問いかける晟を不思議に思った有羽は疑問符を頭の中でたくさん浮かべている様子だった。それに気付いた智孝は、軽く晟の紹介をする。
「ああ、晟は紘人さんの息子なんだよ」
「──え、は、ええっ!? 紘人さんて、あの紘人さん? 字守を作ったMARS(マース)の初代リーダー?」
興奮する有羽とは裏腹に、晟はつまらなそうな表情を浮かべた。幼い頃から「皆の憧れのヒーロー」である父の名を出すと、手のひらを返したような反応をされていたので仕方ないと言えば仕方なかった。しかし。
「へー、じゃあ、色々と大変だったでしょ? それだけ有名だと、どうしても比べられちゃうもんね」
有羽は今までにない反応を示した。晟も目を丸くしてその心の内を表す。
「私はどっちかっていうと、これから晟がどう活躍するのかが楽しみだな」
「すげー……そんな反応見たことない」
「え? そう? だって晟は晟じゃない。紘人さんじゃないんだし。って同じこと言ってる?」
「いや、いいんじゃないか。嬉しそうだし」
笑いながら答えると、晟はまたぎょっとした。今度は恥ずかしさがこみ上げてきたのだろう。晟の様子を見て、やはりチームに有羽を入れることは『正解』だったと確信する。
予想もしない答えを返してくるのが有羽であり、突飛で不可解な行動もとるが、根本的な真理をこいつは掴んでいる。
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