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それは私が5歳になってすぐのこと。
母の念願だった新築一戸建てが完成した。
茶色い壁の四角い家を初めて見た時、まるでチョコレートケーキみたいだと思った。
生クリームで描かれたような白い窓枠が春の日差しを受けて輝き、とても眩しかったのを覚えている。
4月の中旬に引っ越しを済ませ、両親と兄と私の新しい生活が始まった。
高い塀に囲まれた新居の庭はとても広くて、玄関へ続く舗装された小道を境に右側が花壇、左側には芝生が敷き詰められていた。
青々と広がる芝生の左奥の隅には、一本の大きな木。
以前あった古い空き家は土地の購入時には既に壊され更地になっていたが、その木だけは残された。
仲介業社がそれは見事な花をつける桜の木だと教えてくれたからだ。
樹齢120年?130年だっけ?
とにかくそれくらい。
確か明治時代に植えられた木と言っていたが、当時の私には想像もつかないほど昔の話だった。
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