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「そうならいいな・・・。」
良郎さんはボソリと呟いた。
「ふぇっ!?」
恥ずかしくて逃げ出したい衝動に駆られていた私は思わずマヌケな声を出してしまった。
こちらの心中など知る由もなく、良郎さんは真顔で言った。
「僕はずっと自分はここに引っかかっているんだと思ってた。姉がどうしているか気がかり過ぎて、桜の花に縛られたまま身動きが取れないんだって。本当はここにいちゃいけないんじゃないか、きちんと成仏っていうか、そういうことをしなきゃならないのかもっていつも不安だった。でも、もしもはなちゃんが言ってくれた通りならあの暗闇でさえも大切な時間に思えるし、何よりここにいることを許されてる気がして気持ちがすごく軽くなる。」
繋いだ彼の手に僅かに力が籠った。
「はなちゃんといると僕はとても救われるよ。ありがとう。」
「うん・・・。」
小さく頷き、私も手を握り返した。
肩の力が抜けたような良郎さんの明るい笑顔がとても眩しかった。
私は良郎さんにずっとここにいて欲しいよ・・・。
そう言いたかったけど。
でも・・・それは彼にとっていいことなんだろうか?
結局、口に出すことはできなかった。
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