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「日和だったら何がウチに合うと思う」
「……普通、賭けの相手に答えなんて訊く?」
「へっ、別に悪かねぇだろ。で、どうよ。春らしい食べ物は」
呆れたように溜息を吐いて、あいつは「そうね」と桃色の頬を掻いた。
「イチゴとか?」
「おい絶対不味いだろ、そのラーメン」
「いやほら、パイナップル入りのラーメン屋さんもあるから。そのノリで」
「世の中そんなもんがあるのか……あれか、酢豚みたいにか。でもイチゴはなぁ」
想像しただけで気持ち悪くなってきやがる。酸味はともかく、甘味をラーメンに入れんのは駄目だ。少なくとも、そいつはウチのラーメンじゃない。
俺ぁ片手を上げて「ありがとよ」と日和に言った。
「もちっと考えてみるわ。明日も朝練なんだろ、もう寝ちまえ」
「うん……あんまり無理しないでね、お父ちゃん。私はスマホでも良いから」
「馬鹿言え。立派な看板娘にしてやるから、覚悟しとけ」
俺達ぁ不敵に笑い合って、やるべきことに集中した。
結局その日は――何も思い付かなかった。
▼△3▼△
あれから数日は頭を抱える日々が続いて、俺ぁ気晴らしに外へ出た。
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