花よりサクラーメン

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花よりサクラーメン

▼△1▼△  こんな歳にもなって、俺ぁ何してんのかと思うよ。  店から歩いて十分。近所でも有名な花見スポット――桜満開公園。こんな場所に、夜中に一人で花びら集めたぁ、天国の爺が見た日にゃあ笑われちまうね。  まあ今も酔っ払いには笑われてんだけどよ。額に手ぬぐい巻いた髭面のオヤジが、でっけぇ鉄鍋抱えて、あっちにこっちへフラフラだ。可笑しいったらありゃしないぜ。  ったく、堪んねぇな。今に見てろよ野郎ども。  笑い転げるような、あっと驚く美味いラーメン、作ってやるからよ。 「見て見て、あいつウケる。なんか走ってんじゃん!」 「ほんとだ! うわ無いわー。いや酒の(さかな)にはなるけどよ」  うるせぇってんだ馬鹿野郎、ほっとけ。いいから酒飲んで寝てろや。こっちだってな、やりたくてやってるわけじゃねぇんだよ。  そもそも俺が桜の花びら集めなんざ始めたのは、あいつの一言からだ。 「……ねえ、どうしてウチには季節限定メニューが無いの?」  のれんを(たた)んだ、薄暗い店内のテーブル席。  まかないの野菜炒めを突っつきながら、娘の日和(ひより)は訊いてきた。     
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