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「…えー、谷中くん。ちょっと唐突すぎて、みなさん言葉を失ってる状態なんだけど…えーと、いいかな?谷中が蓮ちゃんに片想いしてたのは周知の事実だ」
林田はコホンと咳払いをすると、みんなを代表するかのごとく、慶太郎に問いかけた。
「その蓮ちゃんから、結婚してくださいって言われて。まあ、それにはみんな喜んでるわけだけど………でもよ、いくらなんでも、明日って…急じゃね?」
「いや、急じゃない。明日、入籍する。蓮のご両親に挨拶に行って、その後うちの親のとこ行って。その足で役所に行って入籍するつもりだよ」
慶太郎は真剣だった。
泣き出しそうなくらい真剣だと、蓮は思った。
「明日っていうのは、やっぱり急過ぎると…」
「鉄は熱いうちに打てって言うだろ?…それに……俺には時間がないから…」
にやりと、いたずらっ子のような笑顔でそう言った。
時間がない、その言葉に林田は口を閉ざした。
慶太郎はの気持ちが、彼にはよく分かっていた。
「それで、みなさんに一つお願いがあります」
慶太郎は姿勢を正すと、特にサエたちの方へと視線を向けた。
「僕は来月、オーストラリアへ赴任します。…ただ蓮は、こちらに残ります」
蓮は慶太郎を見上げた。
その表情を見て、やっぱり泣き出しそうだと思った。
「どうか、蓮のことをよろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。
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