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不意に慶太郎の腕が伸びて、蓮をぎゅうっと抱きしめた。
「…俺が嫌いになるワケないだろ?…そういう事言ったり、そういう顔するのがダメなんだよ。自分を抑えられなくて、箍が外れそうになる」
ー蓮を抱きたい。
その抑えがたい健全で正常な欲望が、慶太郎の中で膨れ上がっていく。
必死に抑えようと堪えても。
どんどんと膨れ上がる。
腕の中で蓮が目を閉じかけた時。
慶太郎の両手が頬を包んで、また唇が触れた。
それは、息苦しいくらいのキスだった。
胸を締め付けるような、切ないキスだった。
白い吐息とともに2人の唇が離れた。
慶太郎は、もう一度蓮をギュッと抱きしめた。
ただ黙って、しばらく抱きしめた。
「…さ、帰ろう!…明日の朝、起きれなくなるよ」
腕を解くと、蓮の手をとって。
慶太郎は何事もなかったように歩き出した。
無理に明るく、振る舞おうとする慶太郎に。
嘘をついていることが心苦しかった。
本当は生理じゃないと、喉元まで出かかったけれど、言葉が出ることはなかった。
夜を共にしたら、あの人たちのように、私を嫌になるかもしれない。
蓮は嫌われることが怖くて。
本当の事を言うことが出来なかった。
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