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それはとても寒い日だった。
今、頭の上には青空が広がっているというのに、深夜には雪の予報が出ていた。
蓮はここのところ、新店立ち上げの責任者として朝から晩まで働き詰めで、ほぼ2ヶ月休みなしだった。
会いたいのに、ずっと会えなかった。やっと英明に会える、そう思って出かけて行った。ウキウキと足取りも軽く、待ち合わせのカフェに入って行った。
そこには、緩やかなワンピースを着た髪の長い女性と英明が座っていた。
「…蓮、実は別に付き合っていた彼女に子供が出来たんだ」
英明は苦しそうに顔をしかめ、蓮を見上げた。
「俺、ずっと蓮を裏切ってたんだ…ごめん。それで…彼女と結婚しようと思う。だから、別れて欲しい。勝手ばっかりで本当にごめん」
…やっぱり。薄々分かってたんだ。
もう一人、女の人がいるって。
蓮は、笑顔を2人に向けた。
「私は大丈夫だよ。お幸せにね」
そのまま、伝票を手に店を後にした。
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