仮面の彼女

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 俺はルームシェアをすることになった。  同居人は女だった。  彼女はいつも仮面をつけていた。  いや、お面っていえばいいのか。露店で売ってるような安っぽいやつ。  ごはん食べるときはバタフライマスクに変更してる。  欲情? しないでしょ。  でも彼女は外に出るとき、仮面を外していく。  なんでだろう。  聞いてみたいが、俺と彼女はただの同居人。恋仲でも友達でもない。なので、そんな権利はない。  これがオバチャンだったら答えるまで、しつこく、しつこく、しつこーーーく尋ねるんだろうな。  そんなある日、俺は思い切って尋ねることにした。 「その仮面」  と、言いかけると、彼女はうなずいた。そして言う。 「嫌われたくて」  俺は首をひねった。 『嫌われるのが怖くて』ではなく、その逆ってのが理解できない。  が、ひとつ言えることがある。 「別に嫌いじゃない」  今度は彼女が首をかしげた。 「もう持ってるかもしれないけど、やるよ」  俺は出先で買った仮面を彼女に渡した。  以来、彼女はずっとその仮面をつけている。
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